最近スポーツの世界でもボトムアップという言葉をよく耳にする事が多くなりました。一昔前までのスポーツにおいてボトムアップ理論を用いて指導をしているチームは少なかったと感じております。以前の指導はトップダウン型が多く、指導者が答えやヒントを与えてスポーツを行うチームが多く見られました。
今回はどちらが意思決定をする際に優れた考え方かという議論や考えではなく、より効果的にチームを前進させる為には、その時の状況下においてどちらが合っているかなどを考え実行することでより良いチーム(会社)作りができるのではないかと考えており、ビジネスの世界でもこの考えは同様でチームの活性化、個人の成長などを助ける意思決定方法ということを認識していきたいと思います。

ボトムアップとは?
ボトムアップとは、現場の意見を吸い上げ経営・上層部が内容を把握した上で意思決定を下すことです。現場が自ら考える事でお客様に寄り添った意見や考えが反映されるということが期待されます。デメリットとしては意思決定までに上長への確認、その後、経営陣に対して報告となりそのまま意思決定になることは難しく企画の再考を要求されたりする事で実現までのスピードが落ちるということが考えられます。
現場としては現状を分析してすぐにでも進めたい企画があったとしても意思決定までに時間を要してしまい販売機会の損失やお客様の要望に応えることができないなどが生じてしまいます。ただし企業としても日々様々な提案があったとしても、それに関わるコストなどを総合的に判断していかないと、闇雲に企画を進めてしまい会社にとって甚大な損害を与えることになり兼ねないケースもあることが懸念で挙げられます。
ボトムアップのメリット
- 従業員の帰属意識やエンゲージメントが高まりやすい
- 従業員の主体性を促せる
- お客様の声が届きやすい
ボトムアップのデメリット
- 意思決定までに時間がかかる
- 上層部の負担、打ち合わせや会議が増える
- 提案する人の主体性がないと形にすることが難しい
トップダウンとは?
トップダウンとは企業の上層部が意思決定をくだし、それに基づいて下部組織を動かすという意思決定スタイルとなります。上層部(経営陣)が決定したことが、そのまま組織にスピーディーに伝えられるので意思決定から行動(実行)までのスピードが早いという特徴が挙げられます。
デメリットとしては大きな舵取りをして現場への理解を求めない場合の意思決定などは社員より反発が出てしまう恐れがあるため、モチベーション低下も招くことになります。また上層部の意思を汲み取ることができないままに業務を進めてしまうと目標数値や目的から大きく外れてしまい効果的な成果が出ない一因になると考えます。
トップダウンのメリット
- 意思決定がスピーディーになる
- 実行までのスピードが早い
- 統制が取れやすい
トップダウンのデメリット
- 従業員のモチベーション低下になる可能性がある
- ニーズに対応できない可能性がある
- 指示待ち人間になる(主体性がなくなる)
ボトムアップ・トップダウンどちらが企業で多く適用されているか?
ボトムアップとトップダウンを調べると、いろいろな記事が出てきます。どのような意思決定をしているのか、意思決定にはどちらが有効的になる要素があるかなど考えていく中で興味を持った記事があり、「“続く企業”ほどボトムアップ型の傾向高まる」との掲載がされておりました。ご興味あれば是非一読ください。(参照:https://consult.nikkeibp.co.jp)
図1 自社はトップダウン型かボトムアップ型か(SA)
上記文献の調査結果、企業の意思決定において用いている手法がトップダウン63.0%、ボトムアップ13.3%と大きく差が開く結果となりました。
図2 勤務先の理想はトップダウン型かボトムアップ型か(SA)
しかし、どちらを理想と考えるかの問いに対してはトップダウンが37.3%、ボトムアップ27.0%という回答となりました。
実際の決定とは違いボトムアップに理想を置く人が増える傾向となりました。ただそれでも、トップダウンが理想と考える回答が、ボトムアップの理想と考える回答に約10ポイント差をつける結果となりました。トップダウンという言葉を聞くと上司や、社長命令といった垂直的な「命令」と捉えマイナスなイメージを持たれる方もいるかと思いますが多くの社員を動かすためや経営戦略を実行するためには有効的な意思決定ということを認識する必要があると考えます。
特に社歴が浅い社員の場合にはそれまでの会社業務を全て把握しているわけでもありませんのでいきなりプロジェクトを任せられても提案をすぐにすることは難しいと考えます。また経営者にカリスマ性がある場合には、トップダウンを用いた組織づくりを目指したほうが対外的な広報的側面も含めて効果的と考えます。
ボトムアップとトップダウンで社員のモチベーションは?
続いてボトムアップとトップダウンの特徴として社員のモチベーションにも大きく関与すると考えます。
- ボトムアップ→内発的モチベーション
- トップダウン→外発的モチベーション
個人が仕事を長く続けて行くには内発的なモチベーションが必要であり、定期的な外発的なモチベーションを促すことで短期的なやる気や士気を上げることにつながると考えます。業務においてやりがいを感じられなくなっている社員がいたらプロジェクトを任せることや、裁量の範囲を広げることで「会社から評価をされている」「信頼をされている」と内発的なモチベーションにつながると思います。このことから内発的なモチベーションを上げるためにはボトムアップを利用した提案が従業員のモチベーションアップにつながると考えます。
トップダウンは一見すると外発的なモチベーションに繋がらないと思われがちですが上層部の思考を汲み取り成果を出せる社員は評価をされやすくその評価が外発的モチベーションに繋がると考えます。(賞与や昇給の対価)また明確な目標や売り上げ達成など日々の仕事に対して自身の成功体験が増えれば自信や成長に繋がると考えます。
トップダウンとボトムアップを組み合わせる「トップダウンデモクラシー」に注目!
最近トップダウン、ボトムアップを組み合わせた「トップダウンデモクラシー」という言葉を耳にする事がありました。トップダウンデモクラシーとは、トップダウンとボトムアップの両者の長所を組み合わせた意思決定手法です。上述したようにボトムアップとトップダウンは表裏一体となっておりメリット、デメリットが非常に明確に分かれております。
そこでメリット、デメリットのいいとこ取りをした手法をトップダウンデモクラシーと言います。上層部がある程度の方向性を示す一方で、従業員の意見やアイデアを積極的に取り入れる方法です。今までのセパレートされた手法とは違い、経営層が方向性を示して、現場に課題解決の方法を問い、現場が課題解決に取り組んだ上で、経営層にアイデアや提案をいたします。意思決定の最終判断は上層部が行いますが、現場の意見に耳を傾け提案をしていただくのが特徴です。現場の意見を集約することで従業員の業務に対してもモチベーションアップにつながり、よりお客様の満足度向上に期待でき、意思決定のスピードを落とさないで経営判断を行いおこないたい場合に最適な手法になります。
まとめ
ボトムアップ・トップダウン、どちらを選択してもメリット・デメリット両方の側面を持ち合わせております。また、業界によって異なる部分、企業風土や歴史などの状況も異なるため上記で説明したように、一概にどちらかを選択するべきという考えでございません。
重要なのは両方のメリット・デメリットを理解して、その都度手法を変えていくことで最良の判断を下すことが重要だということです。どちらの手法においても、最終意思決定はトップ(経営陣)が下すことになります。ただ、社員の成長やエンゲージメント高めるためには、現場の声にも耳を傾けるボトムアップ理論を忘れないようにしましょう。
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