多くの企業で働き方改革の取り組みがなされています。
取り組み項目でよく耳にするのが、在宅勤務制度の新設、年次有休休暇取得の促進、仕事と育児の両立支援、女性の活躍推進と育児支援、ノー残業デイの設定、副業解禁、朝方勤務、リモートワーク等の取組みです。
一方で、このような声も聞かれます。「仕事が終わっていないのに早く帰らなければならず、お客様に若干迷惑を掛けている」「残業が減って、収入が減り、小遣いが減った」
本来であれば、社員一人ひとりの能力が高まることで、仕事の品質が高まり、それによってお客様に喜ばれ、会社の業績が上がり、社員の給与・賞与も上がる状態が望ましいと思いますが、そのような状態とはほど遠いのが実状である企業も多いように見受けられます。
望ましい状態に近づける方策
ここではその“望ましい状態”に近づける方策をご紹介したいと思います。
その方策は、様々な企業の取組みの中で、“望ましい状態”を実際に実現した職場に見られる共通点が大元となって生み出されています。
その共通点は次の3点です。
- 先を見てリスクを察知し、事前に手を打つマネジャーがいる
- 職場に“勝てる計画”がある
- オープンで双方向のコミュニケーションになっている
この3点が職場に備わるようにしていけばいいということが元々の発想です。
では、どのようにして具備していくのかその概要を紹介します。
大きく2つのステップがあります。それは【意識変革の醸成】と【“勝てる計画”づくり】です。
意識変革の醸成
まずは職場における意識変革の醸成を図っていきます。
- 1.管理職が職場の方向性を描く
- 1-1.自職場の計画の整備状況の問題点を明確にする
- 1-2.自職場のコミュニケーション状態の問題点を明確にする
- 1-3.自職場のマネジメントスタイルの問題点を明確にする
- 1-4.上記を踏まえた上で、今後の職場の方向性を描く
- 2.一般社員が職場の方向性を描く
- 2-1.自職場の計画の整備状況の問題点を明確にする
- 2-2.自職場のコミュニケーション状態の問題点を明確にする
- 2-3.自職場のマネジメントスタイルの問題点を明確にする
- 2-4.上記を踏まえた上で、今後の職場の方向性を描く
- 3.一般社員と管理職の考えを統合し、職場全体としての方向性を固める
- 3-1.一般社員が描いた職場の問題点と方向性を管理職にぶつける
- 3-2.管理職が描いた職場の問題点と方向性を一般社員に発信する
- 3-3.上記を踏まえて、管理職と一般社員の共通の方向性を固める
これらのステップを踏むことによる効果として
- 管理職が、これまで認識してなかった一般社員の考えを知ることで化学変化が起こり、危機感が芽生える
- 管理職の考えを聴くことで、一般社員に化学変化が起こり、今後職場が良くなっていきそうだという期待感が芽生える
- 管理職と一般社員に一体感がもたらされる
- 職場を良くするという意欲が高まる
等が観察されています。
勝てる計画づくり
次に【“勝てる計画”づくり】です。まずは勝てる計画を立てていきます。ここで言う”勝てる計画”とは以下の8つの要件が備わっているものをいいます。
- アウトプットイメージ・・・どの様な結果の状態を実現したいか
- 課題・・・アウトプットイメージを実現する上で障害となることは何か
- 作戦ストーリー・・・課題を解決するためのストーリーは何か
- 必要作業・・・作戦ストーリーを実行する上でのタスクは何か
- 所要時間・・・各タスクの見積所要時間はどれくらいか
- 優先順位・・・各タスクの優先順位はどうか
- アサイン・・・メンバーの能力や適性を踏まえたアサインはどうか
- 1週間計画・・・メンバー個々の1週間の仕事の計画はどのようになっているか
- 負荷状況・・・各メンバーの負荷の見える化
- 負荷調整・・・上記ステップを経て、日常的に負荷調整実施
上記の負荷状況や、3か月先の先行計画も明確になるため、マネジャーは先を見てリスクを察知し、事前に手を打てる状況を作り出すことが出来ます。
すなわち、前述した望ましい状態を実現した職場の共通点である下記3点
- 先を見てリスクを察知し、事前に手を打つマネジャーがいる
- 職場に“勝てる計画”がある
- オープンで双方向のコミュニケーションになっている
が整い、結果的に職場における成果が上がり、人が成長し、残業も減らすことが実現出来ていきます。
とあるメーカーの例
このステップを実行したあるメーカーの例を取り上げたいと思います。
58歳の試作部門の部長がいらっしゃいました。あと数年で定年退職を迎えるところでした。見るからにやる気のなさそうな表情と力の無い言動がその方の当初の状態でした。それもそのはず、その部門は企画部門から依頼された新商品のサンプルを試作する仕事なのですが、まさに言われたことを言われた通りに作ることが求められていました。やらされ感満載でした。
そのような彼が、やる気に満ち溢れた人材に変わっていきました。
何が彼をそうさせたでしょうか。それは、上記ステップⅰ)を実行している時に起こりました。部門の存在意義(何の為にこの部門は存在するのか)を考えていただいた時のことです。
彼曰く
「私たちの部門は今まで、企画から言われたものを作ってきました。しかし、本来、試作部門というのは、研究開発的な要素があり、市場のニーズに合った商品を自らどんどん試作していくことが私たちの部門の使命なのです。」
と力強く語っている姿がありました。
そこから彼の動きは変わりました。企画から言われたものを作るだけではなく、市場に必要とされるものは何かを考え、自ら試作を生み出していきました。その際に、やるべきことが一気に増え、一時的に負荷が高まりましたが、前述のⅸ)負荷の見える化とⅹ)日常的に負荷調整のステップを実行することで、それほど残業をしなくとも試作部門として付加価値を高めることが出来、人も育っていきました。
これは、働き方がガラリと変わってしまった、まさに“働き方改革”そのものといえるのではないでしょうか。働き方改革で何をすべきか迷われている方には是非この取組をおすすめしたいと思います。
働き方改革に取り組む上で、今一度以下の点を再点検してみてはいかがでしょうか。
- なぜ働き方改革をやるのか
- 働き方改革で何を実現したいのか
- そして、なぜそれを実現したいのか
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