給与計算は社内の総務や人事、経理などの部署で行うのが一般的ですが、年末調整や税金の納付などの作業が煩雑になりがちなため、アウトソーシングしている企業も少なくありません。こちらでは、給与計算業務の概要やアウトソーシングすることのメリット、外部業者に依頼するときに注意すべき点などについて見ていきましょう。
給与計算の担当部署は?どんな業務がある?
給与計算を行う担当部署は、企業によって異なります。通常は従業員のデータや勤怠状況を管理している人事や、福利厚生を担当する総務、給与台帳や金銭関係の管理を行う経理が行います。ただし、少人数の会社では事務員がこれらの業務をまとめて行うケースも少なくありません。
給与計算は、毎月従業員一人ひとりについて給料の総支給額、控除額、手取り額を計算して支払いを行うのが主な業務です。総支給額は人事データと勤怠表から基本給と手当を合算したもので、この金額に対して所得税や社会保険料などの金額を算出していきます。また、財形貯蓄などの給料から天引きされるものがあれば控除額として計上し、税金等とあわせて総支給額から差し引きます。これが実際に従業員に支給される手取り額で、現金や指定口座への振込などで支払うという流れです。
これらの作業を従業員の人数分、毎月間違えないように行わなければなりませんので、給料日前は特に忙しくなります。
そして、給料から控除した税金や積立金などの支払いもしなければなりません。源泉所得税は税務署、年金や健康保険料は社会保険事務所、住民税は市区町村、雇用保険料は労働監督署など、それぞれの関係機関に納付を行い、さらにその内訳を従業員ごとに作成されている賃金台帳に記録する必要があります。
加えて、年末には従業員から基礎控除申告書や保険料控除申告書を回収し、その記載内容に応じて年末調整をしなければなりません。生命保険や住宅ローン、扶養控除などをふまえて正確な所得税額を計算し、税務署に法定調書合計票等の書類を提出します。さらに、従業員ごとに年末調整と源泉所得税の差額を精算し、源泉徴収票を発行するとともに、従業員が居住する自治体にも提出する必要があります。
このように、給与計算は計算項目が多く、忙しさにも波がある業務です。金銭管理なのでミスが許されませんし、税率や控除額などの法改正や就業規則の変更があれば、その都度新しくなった内容で計算しなければならないなど、法的知識や柔軟な対応力も求められます。
アウトソーシングのメリット
給与計算を未経験者が正確に行うことは困難ですので、自社の従業員を教育するのではなく外部に委託する企業も増えています。給与計算をアウトソーシングした場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
正確・迅速に計算ができる
複数の業務を行う従業員が給与計算をした場合、最新の法令や就業規則の変更を見落としてしまい、以前の方法で作業をしてしまう恐れがあります。また、チェックすべき項目が多いため、少人数の作業ではミスが生じる可能性もあるでしょう。
アウトソーシングにした場合、給与計算業務専門のチームで作業を行いますので、最新の法令等にその都度対応することはもちろん、複数回チェックを行うことで計算ミスを防ぎます。賃金台帳や法定調書等の必要書類も最新の書式で法令に従って作成してもらえるため、安心です。
人件費やシステムなどのコストが削減できる
給与計算を自社内で行うには、業務を担当する事務員を雇い入れて計算システムを導入しなければなりません。担当者の教育に要する時間やシステムの構築、管理などのコストを考えると、企業によってはアウトソーシングした方がトータルコストを抑えられることもあります。
納税を忘れて延滞税が発生したり、計算ミスで従業員に本来よりも多額の還付になったりするリスクを抑えることにもつながるでしょう。
コア業務に集中できる
給与計算は正確さや締め切り厳守を求められるため、本来の業務の時間を割かれて特定の従業員に負担が集中しがちです。給与計算の担当者は給料日前や年末調整の時期に休暇を取りづらくなりますし、集中力を欠いてコア業務でミスが生じる可能性もあります。
給与計算業務をアウトソーシングすることにより、このような時期による負担の偏りが軽減されますし、コア業務に集中できることで同じ作業時間でも作業効率化が期待できます。
こんな企業はアウトソーシングがおすすめ
給与計算のアウトソーシングは、どんな企業にもすすめられるものではありません。例えば、従業員が数人程度の会社で給与計算に慣れている従業員がいれば、元々それほど大きな負担ではないでしょう。では、どのような企業がアウトソーシング向きなのでしょうか。
まず、従業員の数が給与計算をする人員に対して非常に多い場合、手当や控除の種類が多く計算が煩雑になりやすい場合などは、優秀な従業員がいても負担が大きいでしょう。給与計算の経験者や専門知識を持った従業員が退職した、あるいは事業を立ち上げたばかりで未経験者しかいない場合にも、教育する余裕がないので自社で業務を行うのが困難です。繁忙期と給与計算の時期が重複する企業も、アウトソーシングすることで業務がスムーズに進むようになります。
また、これまで自社で給与計算を行ってきたという企業でも、毎年何かしら変わっていく法改正に対応しきれない、給与計算が忙しくなる時期は本来の業務が進まない、給与計算のために人員を増やしていて人件費が高いなどの問題を感じているならば、アウトソーシングした場合にどれくらいの費用になるのかを調べてみると良いでしょう。
アウトソーシングする際の注意点
給与計算のアウトソーシングは様々なメリットが得られる一方で、注意すべき点もあります。
まず、月々の給料計算や賃金台帳の作成は業者にアウトソーシングすることができますが、税務署に提出する書類を作成する年末調整は税理士しか代行できません。年間を通して最も負担の大きい作業である年末調整を依頼したいのであれば、注意が必要です。
また、費用面の確認はしっかり行いましょう。給与計算の代行費用は従業員の人数で算出することが多いですが、クライアントの就業規則に合わせてシステムを構築しているようなサービスであれば、就業規則が改定されればシステム自体を変更しなければならないため、追加費用が発生すると考えられます。
さらに、従業員数が増えるほど、一人あたりのコストは安く抑えられるようになっていますが、どこまで依頼できるのかは会社によって異なります。例えば、給料計算や書類の作成だけを引き受けて、従業員への支払いや勤怠管理などは自社で行うようなケースもありますので、アウトソーシングしたい業務が含まれているのか確認しましょう。
加えて、ノウハウの蓄積やセキュリティについても考えておく必要があります。給与計算をアウトソーシングした場合、自社内の負担は軽減されますが、自社で給与計算をするようになった場合、過去のノウハウがないので慣れるまで苦労するでしょう。また、従業員の個人情報や給与の額などが委託会社に開示されるため、データのセキュリティ対策や秘密保持がしっかりしているところを選ぶことも重要です。
自社にとってメリットが大きいなら検討の余地あり
このように、担当部署で給与計算以外の業務が煩雑な場合や従業員数が多い場合などは、アウトソーシングしてコア業務に集中した方が効率的です。もちろん、費用面やセキュリティの問題もありますので、自社にとって業務委託するメリットが大きいのかを確認する必要がありますが、これまで年末調整や納税の負担が大きかったのであれば、検討してはいかがでしょうか。
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