偽装請負とは、実際には「労働者派遣」に該当しているにもかかわらず、「業務委託(請負)」を偽装していることである。契約上は注文主と労働者との間に指揮命令関係のない「業務請負」形式(請負側の指揮命令下で労働者が働く)になっていても、実質的には注文主の指揮命令下で労働者に業務を行わせている場合、偽装請負となる。
本来、「業務請負」とは労働安全衛生法に基づき、事業者責任は請負業者が負うため、注文主には業務上の責任は一切発生しない。しかし「労働者派遣」(実態が労働者派遣となる「偽装請負」)の場合には、事業者責任は派遣先(注文主)が負うことになる。現在は、注文主が事業者責任を負わない「業務請負」が広まっている。
この「労働者派遣」と「業務請負」との違いは、契約形式ではなく「実態」がどうなっているかによって判断されるものだ。契約上は業務請負になっていても、労働者と注文主との間に指揮命令関係があれば、それは労働者派遣と見なされ、「職業安定法第44条」と「労働基準法第6条(中間搾取の排除)」に抵触する。ポイントとなる違いは、指揮命令系統がどのようになっているか。どこからの指示により業務遂行しているかが、カギとなる。
製造業においては、2004年2月まで「労働者派遣」が禁止されていたため、「業務請負」の形式をとっている業者は多かったが、2004年の法改正により製造業派遣規制が解禁された。
ところが、製造業への派遣期間は1年と限定され、期限終了後に直接雇用を申し込む義務があったため「偽装請負」減にはつながりにくかった。
またそれ以外にも、IT業界においては、個人事業主や請負業者が注文主から直接の命令を受け業務を行っているケースも少なくない。
多重下請け状態がおおく、元請け企業との接点がないなどの構造があるうえ、客先に常駐していると自然と客先の従業員とチームを組んで仕事をすることになるため、直接指令が来るケースが多いのだ。つまり偽装請負が発生しやすい状況にある。
また企業側は、「偽装請負」のつもりでなくとも、偽装請負と認められかねない状態になっているケースがあるため、事前に労働派遣や業務請負の違いを知り、対策しておく必要がある。