研修を実施しているものの、学んだことが現場で活かされず、効果を実感できていない企業様も少なくありません。
また、従業員の間で研修の必要性そのものが疑問視され、参加に対して後ろ向きな姿勢が見られるケースもあるのではないでしょうか。
本コラムでは、こうした課題を踏まえ、効果的な研修を実現するためのポイントや注意点について解説します。

働き手のニーズと人材育成の重要性

中小企業白書2024年によると、働き手の仕事に対するニーズは近年変化を見せています。2019年と比較して2023年では、「資格や免許の取得に繋がること」や「色々な知識やスキルが得られること」を重視する割合が増加傾向にあります。この結果は、働き手が自身の市場価値を高め、キャリアアップに繋がるような成長機会を求めていることの表れと言えるでしょう。

一方、ニーズが減少した項目に目を向けると、「やりがいを感じられること」が最も大きく、次いで「自分のやりたい仕事であること」が減少しています。これは、働き手が仕事に求めるものが、内発的な動機よりも、より実質的なスキル習得やキャリア形成といった側面にシフトしている可能性を示唆しています。企業としては、この変化を捉え、従業員の成長意欲に応えるような人材育成の取り組みを強化する必要があると言えるでしょう。

人材育成と人材定着の関係性

また、同白書では、人材の定着状況と人材育成の取り組み状況についても触れられています。人材育成の取り組みを「増やした」企業においては、人材が定着している傾向が見られました。これは、従業員の成長を支援する企業の姿勢が、従業員のエンゲージメントを高め、離職を防ぐ効果があることを示唆しています。

このように、働き手のニーズの変化と人材定着の観点からも、人材育成に注力することは、中小企業にとって人材の確保と定着を図る上で、極めて重要な取り組みであると言えます。研修は、従業員のスキルアップや知識習得を支援するだけでなく、企業が従業員の成長を真剣に考えている姿勢を示すことで、従業員のエンゲージメント向上にも繋がるのです。

効果的な研修を実施するうえでの4つのポイント

研修を実施しても期待した効果が得られないとお悩みの企業は少なくありません。効果的な研修を行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、特に重要な4つのポイントについて解説します。

①経営戦略との一貫性

人材を育成することは、企業の経営戦略を達成するための手段の一つです。やみくもに研修を実施するのではなく、企業の目的を達成するために「どのような人材が必要なのか」「いつまでに、どれくらいの人数が必要なのか」といった具体的な要因計画に基づいた研修を行う必要があります。そのためには、まず、企業の現状の人員構成を正確に把握し、経営戦略の実現に向けて不足しているスキルや知識を明確にすることが重要です。全社で研修の目的を共有し、戦略と連動した人材育成体系を構築することが、研修効果を高めるための第一歩となります。

➁研修への動機づけ

研修の効果を最大限に引き出すためには、従業員の積極的な参加が不可欠です。研修の目的や意義が従業員に十分に伝わらず、受講意欲が低い状態では、研修内容が身につかず、効果も期待できません。また、研修内容が従業員のキャリア目標や日々の業務上の課題と結びついていない場合、「やらされ感」が生じ、研修へのモチベーションは低下してしまいます。

研修前には、研修の目的・目標を明確に伝え、受講者一人ひとりが研修の必要性を理解できるように丁寧に説明することが重要です。また、研修内容が自身の役割や目標、業務上の課題とどのように関連するのかを示し、実践的なプログラムにすることで、従業員の学習意欲の向上やスキルの定着が期待できます。

③研修後の振り返り

研修は実施して終わりではありません。研修で学んだ内容を振り返り、自身の成長に繋げるプロセスが非常に重要です。研修後には、学んだ内容をどのように日々の業務で活かすのか、具体的なアクションプランを策定する機会を設けることで、学びの定着を促進することができます。
また、研修内容に対する受講者からのフィードバックを収集し、研修効果を検証することも重要です。受講者の声に耳を傾け、研修内容や実施方法を継続的にブラッシュアップしていくことで、より効果的な研修へと改善していくことができます。

④最適な研修講師のアサイン

研修の講師は、社内の社員が務める場合と、外部の専門講師に依頼する場合があります。それぞれのタイプにはメリットと注意点があります。

社内講師のメリット・注意点

社内講師のメリットとしては、自社の業務内容や企業文化を深く理解しているため、より実践的な指導が可能である点や、外部への委託費用が発生しないためコストを抑えられる点が挙げられます。また、社内で育成に関するノウハウが蓄積されるという側面もあります。
一方、注意点としては、市場の最新トレンドや法改正への対応が遅れる可能性があることや、講師が受講者の上司や先輩である場合、受講者が本音で意見を言いにくい状況が生じる可能性があることなどが挙げられます。また、研修の企画から実施、フォローまでを社内講師が担当する場合、その業務負荷は大きくなります。

社外講師のメリット・注意点

社外講師のメリットとしては、最新の知識や高度なスキルを習得できる機会を提供できる点や、客観的な視点や異なる価値観に触れることで、新たな気づきを得られる可能性がある点が挙げられます。また、研修の準備にかかる時間や手間を削減できるという利点もあります。
一方、注意点としては、研修内容が自社のニーズに完全に合致しない場合や、汎用的な内容に偏ってしまう可能性があること、また、柔軟なスケジュール調整が難しい場合があることなどが挙げられます。自社の研修目的や予算、従業員のニーズなどを総合的に考慮し、最適な講師を選択することが、研修効果を高める上で重要なポイントとなります。

研修効果を最大化するために注意すべき点

研修効果を最大限に発揮させるためには、研修の企画段階から、効果を最大限に発揮できる“環境”を整備することが不可欠です。“環境”が十分に整備されていない状態で研修を実施しても、期待される効果を得ることは難しく、効果検証を行ったとしても、正確な結果を得ることができません。

①研修テーマの選定における注意点

研修内容を検討する際には、人材や組織課題の解決に繋がるテーマを深く掘り下げて検討する必要があります。研修会社が用意したテーマや、安易なネーミングに惹かれて研修内容を決定してしまうと、結果的に自社のニーズと合致せず、研修効果が薄れてしまう可能性があります。研修を企画する際には、事前にしっかりと自社の課題を分析し、その解決に貢献できる研修テーマを選定することが重要です。

②研修への理解と協力体制の構築

研修の対象となる従業員の上司が研修内容や重要性を十分に理解していない場合、研修後のフォローアップや現場での育成が適切に行われず、研修で得た学びが活かされないという事態に陥りやすくなります。研修を実施する際には、事前に管理職層に対して研修の目的や内容、期待される効果などを丁寧に説明し、研修への理解と協力を得る必要があります。研修後には、上司が部下の学びをサポートし、業務で実践できるよう促すなど、組織全体で研修効果を高めるための連携が重要となります。

研修効果を高め、人材育成を成功に導くために

働き手のニーズは変化しており、自身の成長を求める傾向が強まっています。企業がこのニーズに応え、戦略的に人材育成に取り組むことは、人材の確保と定着に繋がり、ひいては企業の成長を加速させる原動力となります。

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