人手不足の構造的危機と「旧来型対応」の限界

日本社会では少子高齢化が急速に進行しており、15〜64歳の生産年齢人口が65歳以上を支える割合は今後さらに低下する見通しです。これは単なる一時的な人材不足ではなく、構造的な労働力供給制約です。

企業経営、とりわけ中小企業にとって、この現実は極めて深刻です。これまで多くの企業は、以下の3つの方針で事業運営を維持してきました。

・自前での人員・ノウハウ確保(自前制)
・人が辞めたら補充する(欠員補充)
・人手不足にはシステム導入で効率化(システム対応)

しかし、こうした「従来型の対応」では、今後の人口減少・人材希少化時代を乗り切ることはできません。
なぜなら、そもそも補充する人材が存在しないからです。

システムを導入しても、それを使いこなす人材や、運用を支えるノウハウがなければ、効果は限定的になってしまいます。

従来は、「システムが悪い」「人がいない」といった単線的な原因分析に終始しがちでした。しかし今は、問題の本質が異なります。「問題は、対策の組み合わせが悪いこと」にあるのです。つまり、単一の解決策ではなく、複数のソリューションを適切に組み合わせて、持続可能な業務運営を構築する必要があります。

「足す」「補う」では解決できない時代へ

これまでの人事・業務運営の基本的な発想は、

「ないものを足す、失われたものを補う」

というものでした。

人がいなければ採用する、ノウハウがなければ研修する、システムが古ければ入れ替える。

しかし、労働人口の減少が加速し、人材そのものが高級品になる時代においては、この「足し算型」の対応は限界に来ています。現場では、人材不足が慢性化する一方で、限られた人員が多様な業務を担わされ、属人的な運用やブラックボックス化が進行。結果として、経営者は「人がいない」「採れない」と嘆き、人事は「システムが機能しない」と現場と経営の板挟みになる構図が生まれています。

こうした中で登場したのが、BPaaS(Business Process as a Service)という考え方です。

BPaaSとは何か──BPO × SaaS の融合

BPaaSは、BPO(Business Process Outsourcing)とSaaS(Software as a Service)の融合によって、企業の業務プロセスそのものを「外部の仕組みとして利用する」モデルです。

単なるシステム提供でも、単なる業務委託でもなく、「業務プロセスをサービス化」するという発想が特徴です。

この解決の考え方は、ひと昔前に流行したTOC(Theory of Constraints:制約理論)にも通じます。TOCは、組織のボトルネックを見極め、そこを集中的に改善することで、全体のパフォーマンスを最大化しようという考え方です。BPaaSは、まさにこのTOC的なアプローチを、テクノロジーと外部リソースの活用によって実現する仕組みといえます。

「行間」を埋めるBPaaSの威力

弊社アクティブアンドカンパニーが取り組んでいる「人事評価BPaaS」を例にすると、その意義は非常にわかりやすくなります。

多くの企業で次のような課題が見られます。

・せっかく人事評価制度を作ったのに、現場で運用が定着しない
・システムを導入したが、使われない・活用されない
・評価者研修をしても、評価の精度が上がらない

こうした問題の原因を、「制度設計の失敗」や「システムの不備」と捉える企業は少なくありません。

しかし実際には、制度とシステムの間の「行間」を埋めるノウハウや人的リソースの欠如こそが、真のボトルネックであることが多いのです。人事評価BPaaSは、このボトルネックを解消します。

・制度の最適化
▶外部の専門家が制度改定・更新を継続的にサポートし、環境変化に合わせて運用を最適化

・システム運用の内製化支援
▶システムが「箱」に終わらず、運用が定着するよう設計と運用をセットで提供

・専門人材の確保
▶社内では確保困難な人事評価運用ノウハウを、BPaaSサービスとして外部から利用

これにより、制度 × システム × 人材の組み合わせを最適化し、組織全体のパフォーマンスを引き上げることができます。

中小企業こそBPaaSで勝負すべき理由

特に中小企業にとって、BPaaSの活用は「選択肢」ではなく「生存戦略」になりつつあります。

中小企業は大企業のように、人事・経理・情報システムなどに専門部署を多数持つことができません。限られた人員で、複雑化する制度・法制度・システム・DX対応に取り組まざるを得ない状況です。このとき、BPaaSを活用することで、大企業と同等レベルの仕組みと専門性を「持たずに使える」状態を作ることができます。

例えば人事領域でいえば、

人事評価
給与計算
勤怠管理
人材育成・研修運用
など

これまで社内で担っていた運用領域を、制度・システム・運用をパッケージで外部化できます。

これは単なる「外注」ではありません。

BPaaSでは、外部リソースが企業の内部業務プロセスに組み込まれるため、内部人員のように機能します。中小企業が、自社リソースのみで同等の運用体制を作ることは、もはや現実的ではありません。BPaaSの活用は、「自前制」を超えるための唯一の現実解といえるでしょう。

「人×システム×仕組み」を最適化する時代へ

少子高齢化と労働力不足が進む中で、企業はこれまでの発想を根本から転換する必要があります。

・人を採用して補う
・システムを入れて効率化する
・研修で人を育てる

といった「単発の対応」ではなく、人 × システム × 仕組みを統合的に設計し、運用まで含めて最適化する視点が不可欠です。

BPaaSは、この課題に対する強力なソリューションです。制度・システム・ノウハウ・人材の「最適な組み合わせ」を、社内で持たずとも利用できるようにすることで、構造的な人材不足の時代にも持続可能な経営基盤を築くことができます。

最後にー 「対策の組み合わせ」が企業の命運を分ける

これからの企業経営は、「システムが悪い」「人がいない」といった単純な原因追及では乗り越えられません。対策の組み合わせの巧拙こそが、企業の命運を分ける時代です。

BPaaSは、その組み合わせを外部サービスとして提供する新たな選択肢です。人口減少・人材希少化という大きな構造変化を前に、自前主義に固執する企業は、もはや「勝てない」どころか、労働力を確保できず存続すら危うくなるでしょう。逆に、BPaaSを活用し、組織の制約を乗り越える企業こそが、これからの時代に競争優位を確立していくのです。

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