採用活動の質は、候補者の能力だけでなく「どのように紹介されてきたか」にも大きく左右されます。 一部のエージェントでは、売上やスピードを優先するあまり、求職者との信頼構築より“数字”が先行してしまうケースもあります。 その結果、入社後のミスマッチや早期離職が発生し、企業の採用力そのものを損なうことがあります。
今、人事が問われているのは――「信頼される紹介」を行うパートナーをどう見極めるか、です。

エージェント任せの採用が抱えるリスク
人材紹介会社を活用することは、多くの企業にとって今や当たり前の選択肢です。
しかし、「紹介してもらえばそれで安心」と思っていないでしょうか。採用の成功は、どんな候補者が来るかだけでなく、どんな経緯でその候補者が紹介されてきたかに左右されます。
一部のエージェントでは、
- 求職者への十分な情報提供が行われていない
- 意向確認よりもスピードを重視して推薦される
- 内定辞退を防ぐために心理的な圧力をかけてしまう
といったケースも見られます。
その結果、求職者が“納得しないまま”入社を決めてしまい、短期離職につながることがあります。表面的には「採用が決まった」ように見えても、実際には“関係の信頼残高”が減っている――そんな採用が起きているのです。
「今日中に承諾して」と迫られることも
実際、弊社にもこうした“焦らされた採用”によって苦しんだ方々からの相談が寄せられています。
エージェント経由で就活をしていたが、なかなか決まらず、紹介された企業に“もう少し考えたい”と伝えた。
すると担当者から『今日中に承諾しないと次は紹介できません』と言われ、焦って入社を決めてしまった。
しかし、入社してみると聞いていた業務内容とも給与とも違い、1年足らずで退職。
その短期離職が足かせとなり、再就職も難しくなってしまった。
このようなケースは決して珍しくありません。
一度の“強引な紹介”が、その後のキャリアや人生に長期的な影響を及ぼすことがあります。そして、結果的に企業も「早期離職」「採用コスト増加」という形でその影響を受けるのです。
問題の本質は「業界」ではなく「姿勢」にある
誤解してはいけないのは、これは業界全体の問題ではないということです。
多くのエージェントが誠実に、求職者と企業の双方の幸せを考えて行動しています。
しかし、一部の現場で“数字優先の構造”が残っているのも事実。そのわずかなゆがみが、企業・求職者・業界全体の信頼を少しずつ損なっているのです。
だからこそ今、人事担当者に求められているのは、「どんなエージェントと付き合うか」を戦略的に見直すことです。
人事が確認すべき「信頼される紹介」の3つの条件
求職者の“背景”を理解して紹介しているか
スキルや経験だけでなく、家庭環境やキャリア動機まで丁寧に把握し、長期的に活躍できる場を見立てているか。
求職者への理解が深いほど、紹介の精度は高まります。
内定後のフォローをしているか
入社前後の不安を丁寧にケアしてくれるエージェントほど、早期離職率は低下します。
“内定で終わり”ではなく、“定着まで伴走する姿勢”が重要です。
「企業と求職者の双方に誠実」であるか
どちらか一方の都合だけを優先していないか。
そのエージェントが、“売上ではなく信頼を積み重ねているか”を見極めましょう。
自社の採用パートナーを見直すタイミング
もし今、
- 紹介された人材の定着率が低い
- 応募者の志向が合っていない
- 採用後の不満や誤解が多い
と感じているなら、“採用パートナーの質”を見直すサインかもしれません。
採用を「数」で追う時代から、「信頼を積み重ねる採用」へ――。人事がエージェントを選ぶ基準を変えるだけで、採用の未来は確実に変わります。
奨学金バンクが実践する“信頼される紹介”
奨学金返済という経済的背景を持つ若者に対して、私たち奨学金バンクは、「奨学金の返済とキャリア形成を両立できる環境」を前提に企業を紹介しています。
✔ 内定を急がせず、求職者が心から納得できるまで丁寧に対話する。
✔ 企業側にも“その人のリアルな背景”を共有し、相互理解を深める。
こうした誠実なプロセスを積み重ねることで、
- 紹介後の離職が少ない
- マッチングの精度が高い
- 紹介担当者が信頼できる
という評価を多くいただいています。
私たちは“スピード”よりも“信頼”を重視する紹介を通じて、企業の採用力を本質的に強くすることを目指しています。
まとめ
採用の成功は、紹介の“速さ”ではなく、“誠実さ”で決まります。
候補者にも企業にも真摯に向き合うエージェントこそが、長期的な定着と組織の成長を支えるパートナーです。
そして企業が「信頼できる紹介」を選ぶことこそが、結果的に採用を強くする最大の戦略になるのです。
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