親が定年退職を迎え、親の介護が心配な人もいるでしょう。実際に親の介護をきっかけに仕事を辞めてしまったり、キャリアを諦めてしまったりする人も少なくありません。企業が社員の仕事と介護の両立を支援するためにはどんな工夫が必要でしょうか。ここでは仕事と介護の両立の課題や、両立支援のためのポイントについて解説します。
仕事と介護の両立に苦戦している人がたくさんいるのが現状
かつて親の介護は家で行うものという認識の家庭が多かったですが、現代では共働き家庭が増えたことで働きながら介護をする人が増えました。しかし介護の負担が大きすぎて仕事に集中できなかったり、仕事を辞めてしまう人も出てきています。そこでまずは、仕事と介護の両立ができていない人がどんな理由で退職しているのか確認しましょう。
体力的に辛い
介護で最も辛い部分が体力的負担でしょう。社会人は毎日会社へ通勤をして働いていますが、会社への行き来だけでも十分に体力を消耗します。本来なら疲れを癒やす時間である家での時間も介護によって消えてしまうので、仕事の疲れが取れないまま次の日を迎えることになります。介護対象者の障害の程度によっては24時間体制で介護をする必要があり、寝不足で疲労が溜まってしまうこともあるでしょう。そのため、中には介護と仕事の両立に体力的な限界を感じて退職してしまう人もいます。
職場からの理解を得られない
介護をしながら働いていると、急病などの関係で仕事途中に帰らなければいけなくなる場面もあります。しかし仕事途中で退社すると他の人に残った仕事のしわ寄せが行ってしまうので、そのせいで職場の人たちとの人間関係が悪化し、働きづらいと感じる人もいます。中には上司との関係が悪化してハラスメントに遭ってしまったり、介護休暇など会社が用意している介護関連制度を利用させてもらえなかったりして、その職場で働き続けることを諦めてしまうこともあります。
企業が介護と仕事の両立を支援しないデメリットとは
介護と仕事の両立支援に力を入れる企業は増えているものの、なかなか制度を活用しきれていないのが現状です。しかし、介護と仕事の両立支援に関する制度を整えないことで起こるデメリットは大きいでしょう。それでは、介護と仕事の両立支援に力を入れないデメリットを見ていきましょう。
人材が定着しにくくなる
介護と仕事を理由に退職する人は跡を絶ちません。ちなみに介護が必要になる平均年齢は75歳、日本の子供を産む平均年齢は30歳なので、45歳頃に親の介護を始める計算となります。企業における45歳前後の社員の立ち位置は、業務の全体像を理解し、管理職として企業の核となる人が多いです。特に管理職の育成には時間がかかるので、そんな人材が介護離職してしまうとなると企業としても大きな損害となるでしょう。
新規で人材を確保しにくくなる
求職者は1つの企業で長く安定して働くために、育児関連制度だけでなく介護関連制度もしっかりチェックしたうえで求人に応募しています。介護休暇などの介護関連制度は福利厚生の一環として導入されるのが当たり前の時代。そこで介護を支援する制度が整っていないと、現代は少子高齢化で大手ですら人材の確保に苦戦している状況なので、基本的な福利厚生制度が揃っていないと判断されて、優秀な人材に避けられてしまうでしょう。介護制度が整っていれば、求職者も将来親の介護が必要になった場面で安心して働けると判断することから、優秀な人材の確保に繋がるでしょう。
介護による人材離れを防ぐために企業ができることは?
介護離職を防ぐには、体力的にも精神的にも安心して介護と仕事を両立できる仕組みづくりが大切です。それでは、介護離職防止のために企業ができることについて見ていきましょう。
働き方改革に基づく様々な働き方の導入
介護と仕事を両立するにあたって大変なのが時間の調整です。就業時間通りに働いていると、デイサービスのお迎えの時間に間に合わないため早退を選択するなど時間の問題で困っている人はたくさんいます。そこで、出社・退社時間に自由度を設けるフレックスタイム制や短時間勤務制度はもちろん、在宅勤務やリモートワークなど出社しなくても働ける仕組みも用意すれば、介護における拘束時間に関する問題も解決できるでしょう。また都市部では、就職のタイミングで都市部に出てきたため実家が田舎にあり、介護を理由に地元に帰ってしまう人も増えています。このような人たちの離職を防ぐためにも、特にリモートワークの体制を整えることは急務でしょう。
介護関連制度の周知と利用の推奨
会社全体で介護関連制度を積極的に広めていかないと、介護支援制度を利用する動きを定着させるのは難しいです。日本の企業はどこも人手が足りておらず、仕事に穴を開けることは悪と考えている人も多いです。しかし、介護は誰もが直面する問題であり、介護関連制度を利用するのはその企業で働く労働者としての権利なので、積極的に使っていくべきと広めていく必要があるでしょう。影響力のあるマネジメント職の人材が介護休暇などを利用していけば、部下も「上司が介護休暇を取っているから自分も」という流れになりやすく、制度の定着が期待できます。
マネジメント職を対象とした勉強会
介護と仕事を両立する人の中には、介護など家庭の事情に関して上司に相談しにくいと感じている人も多いです。介護と仕事の両立は、職場からの理解が得られないとなかなか難しいでしょう。そこでマネジメント職の人材が介護など家庭の事情を汲み取り、仕事を割り振る、通院の日を把握するなどすれば、介護をしている当事者も、同じ職場で働く人たちも無理することなく仕事に取り組めます。しかし、マネジメント職の中には家庭の事情への理解を示さず、むしろパワハラ・モラハラ行為を行う人もいます。その理由には、介護への理解度が低く、他の人と同じように仕事を割り振っても問題ないという考えがあることが予想できるでしょう。そのような社員に対しては働きながら介護をする人の一日のスケジュールはどんなものなのかなど、具体的に介護の内容を理解し、介護と仕事を両立する社員の支援の方法などを周知していく必要があります。このような理解は、親の介護をしている社員が急用で退社することになっても無理のないスケジュールの組み立てができるようになり、仕事も円滑に進められるようになるでしょう。このように、介護に関して定期的に勉強会を開き、介護に関する理解を上層部が深めて相談しやすい雰囲気を作ることで、社員も安心して介護関連制度を利用できるようになり、人材の定着にも繋がります。
成果主義での評価基準の構築
介護をしながら働く人が気軽に時短勤務を選べない理由には、いくら成果を出しても他の人より勤務時間が短いからという理由でキャリアを閉じられてしまうことが挙げられます。一定の時間内にこなせる仕事の量には個人差があり、優秀な人ほど短時間で多くのタスクをこなしているのにもかかわらず、労働時間が他の人より短いからという理由で評価してもらえないのは理不尽でしょう。介護休暇や時短勤務を推奨していくためにも、労働時間だけでなく成果も評価にはっきりと組み込み、企業で長く働きたい人がキャリアを諦めなくて良い制度を構築する必要があります。
人材定着は介護と仕事の両立支援がカギ!
現代は老人ホームへの入居も数年待ちが当たり前という時代です。今後その傾向は強くなり、企業も介護と仕事の両立への理解を深め、社員が無理なく両立できるような仕組みづくりが課題となります。少子高齢化で人材の獲得が難しい現代こそ、長く安心して働ける仕組みづくりに注力し、優秀な人材が離れていかない魅力的な企業を目指しましょう。
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