高齢化社会が進み、少子化にますます拍車がかかっています。出生率の低下も著しく政府の推測よりも早いペースで出生数が減少しており、労働力の不足も深刻になっています。そのため、少子化を食い止めるために政府による経済的支援が行われているほか、企業においても子育てしやすい労働環境を提供することが求められています。
海外の少子化対策や経済的支援
日本だけでなく、多くの先進国が少子化問題と直面しており、さまざまな施策が行われています。そんな中、少子化対策に成功しているのがスウェーデン、フランス、シンガポールです。
スウェーデンの少子化対策
スウェーデンは長年にわたり少子化対策を実施しており、一定の成果を上げています。スウェーデンでは、子育て世帯に対して保育料がほぼ無料である保育制度が整備されています。育児休暇も充実しており、女性だけでなく男性も育児休暇を取得することが奨励されています。これにより、子育て世帯が働きやすい環境が整備され、出生率の向上につながっています。
フランスの少子化対策
フランスでは、子育てを支援する政策が積極的に実施されています。子育て休業制度が整備されており、出産前後の職場復帰をサポートするための制度が整備されているほか、保育園の整備も進んでおり子どもを預ける場所が確保されています。子どもを持つことを奨励する政策が実施されており、出産手当や育児手当が支給されるほか、子どもを多く持つことで税制優遇措置が受けられるなど経済的な面での支援が行われています。
シンガポールの少子化対策
シンガポールでは、出生率を上げるために様々な取り組みを行っています。子育てに関する支援策の拡充や、出産手当の増額、保育所の拡大、教育制度の改革などが挙げられます。出生率の向上を目的として、独身者に出会いの場を提供する結婚支援なども行われています。また、少子化問題を解決するために、移民政策も重要な役割を果たしています。
日本の少子化対策や経済的支援
日本においても、少子化問題が指摘され始めた1990年頃から政府による少子化対策や経済的支援が行われてきました。1994年には少子化社会対策基本法が施行され、少子化に対処するための施策が掲げられました。希望する時期に結婚でき、希望するタイミングで希望する数の子供を持てる社会をスローガンにして、待機児童の解消に向けた取り組みや小学校就学後の放課後の居場所の確保などが実施されているほか、子育て世代への経済的支援も行われています。また、男性が育児休暇を取ることも推奨されています。経済的支援においては、児童手当や出産手当、保育所入所料補助などの補助金が給付されます。
しかし、法的には子育てしやすい労働環境が整いつつあっても、まだまだ大手を振って恩恵に与ることができないという現実もあります。グローバル企業は世界のトレンドに倣い、子育て世代が働きやすい環境が整えられていますが、中小企業では昔ながらの体質が残っているところもあります。女性が育児休暇を取得することは一般的になりましたが、男性が育児休暇を取得するのはまだまだレアなケースです。少子化を改善するためには、企業が積極的に子育て世代が働きやすい環境を提供することが求められます。
企業が積極的に少子化対策を行うメリット
企業が少子化対策を行うことは従業員のみにメリットがあると考えられてしまいがちですが、企業側にも多くのメリットがあります。
労働力の確保
少子化により、将来的に労働力不足が生じることが予測されます。積極的に少子化対策に取り組む企業は、柔軟な働き方や育児支援、介護休業制度などを導入することで、女性やシニア世代などの多様な人材を活用できるため労働力を確保することができます。
生産性の向上
企業が働き方改革に取り組むことで、従業員のワークライフバランスが改善され、ストレスや過労による離職率の低下につながることが期待されます。また、柔軟な働き方を導入することで、従業員のモチベーション向上や生産性の向上にもつながります。
人材の定着・流出防止
少子化により優秀な人材の争奪戦が繰り広げられる中、企業が少子化対策に取り組むことで人材の定着率が上がることが期待されます。また、従業員が企業に長期間勤め続けることで、企業側もその従業員の専門知識やノウハウを吸収しやすくなるため、企業の競争力向上にもつながります。さらに、少子化により人材流出が生じることが予想されますが、企業が働き方改革や育児支援などを導入することで、人材流出を防止できるでしょう。
イメージアップ
少子化対策に取り組む企業は、社会的責任感があると認識されることがあります。また、女性やシニア世代などの多様な人材を活用することで、ダイバーシティに富んだ企業イメージをアピールすることもできます。
国や自治体による少子化対策に積極的な企業への支援
政府は、企業が積極的に少子化対策を行うように、様々な支援を行っています。また、自治体によっては、少子化対策に積極的な企業に対して独自に支援を行っているところもあります。
中小企業子育て支援助成金
従業員100人以下の中小企業に向けた、子育てしやすい労働環境を整えるための助成金です。中小企業は子育て支援体制が遅れているところが多いため、育児休業や短時間勤務制度の利用者が初めて出た場合に国が助成金を支給するというものです。
両立支援レベルアップ助成金
働く親が子育てや介護といった、家庭の事情と仕事を両立するための支援を行うための助成金制度です。厚生労働省が中心となって導入され、企業が従業員の両立支援に積極的に取り組むことを促すことを目的としています。また、積極的に取り組み成果を上げている企業は、「ファミリー・フレンドリー企業」として厚生労働大臣賞や都道府県労働局長賞を受賞することもあります。
地方自治体の支援策
地方自治体においては、それぞれが独自の支援を行っています。石川県では子育て支援に積極的に取り組む企業に対して低利の融資制度を作っているほか、佐賀県では育児休業制度を導入している建設事業者の入札参加資格を優遇する措置を取っています。
企業に求められる少子化対策
少子化対策としてこれからの企業に求められるのは、次の3つになります。
多様な働き方の提供
従来のフルタイム勤務だけでなく、パートタイムや時短勤務、テレワークなど多様な働き方を提供することです。子育てや介護をしながらでも働ける環境が整備されると、経済的にも安定して少子化に歯止めがかかることが期待できます。
育児や介護支援の充実
子育てしやすい労働環境を提供するには、企業独自で保育所や託児所を設置するなど、育児支援や介護支援を積極的に行うことが求められます。職場内に保育所や託児所があると、休憩時間に子どもの様子を見ることができるため安心して働くことができます。
人材育成の強化
採用よりも、既存の社員を育成することが大切です。継続的な教育やスキルアップの機会を提供することで、社員のモチベーション向上や、生産性向上に繋がります。一人一人の能力が高まることで、育休などで人員が少なくなった場合でも円滑に業務をこなすことが可能になります。
企業は少子化対策のために積極的な子育て支援が求められる
少子化問題は単なる社会問題ではなく、深刻化するにつれて人材確保も難しくなり企業の存続にも関わってきます。また、子育て支援の労働環境を整えることは、企業全体の労働環境を向上させることにも繋がります。少子化対策は短期的に見るとメリットが少ないと感じるかもしれませんが、将来への投資として取り組むことが大切でしょう。
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