各雇用形態の特徴

日本の雇用形態は、伝統的なメンバーシップ型から、より柔軟なジョブ型へと変遷しています。企業は自社の状況や戦略に応じて、最適な雇用形態を選択することが重要です。以下では各雇用形態の特徴をまとめております。

メンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用は、人に仕事が紐づく雇用形態です。特徴は以下の通りです。

  • 終身雇用:一度雇用されると定年まで働くことが一般的。
  • 年功序列:勤続年数や年齢に基づいて昇進・昇給する。
  • 企業内教育: 社員は企業内での訓練や教育を受け、企業独自のスキルや文化を習得。
  • 幅広い職務:特定の職務に限定されず、様々な業務を経験することが多い。

メンバーシップ型雇用のメリットは、1つ目に、安定した雇用が保証され、社員の忠誠心が高いということです。終身雇用が一般的であるため、社員は定年まで雇用されることが期待でき、雇用の安定性が高いです。この安定性により、社員の忠誠心や会社へのコミットメントが強化されます。

2つ目は、長期的な視点での人材育成が可能であるということです。社員を長期的に雇用する前提で計画的な教育や訓練が実施されるため、企業内でのキャリアパスが明確になります。これにより、社員は様々な業務を経験しながら成長することができます。一方で、メンバーシップ型雇用のデメリットは、1つ目に、新しいスキルや知識の獲得が遅れる可能性があるということです。同じ企業内での教育や訓練が中心となるため、外部からの新しい知識やスキルの導入が遅れることがあります。技術革新や市場の変化に迅速に対応するためには、外部の専門家や新しいスキルの獲得が必要ですが、それが難しくなることがあります。2つ目は、柔軟性に欠けるため、急速な市場変化に対応しにくいことです。年功序列や終身雇用の仕組みがあるため、組織の柔軟性が低下しがちです。このため、急速な市場の変化や新しいビジネスチャンスに対して迅速な対応が難しくなることがあります。

ジョブ型雇用

ジョブ型雇用は、仕事に人が紐づく雇用形態です。特徴は以下の通りです。

  • 職務明確化:採用時に具体的な職務内容が明示され、その職務に特化したスキルや経験が求められる。
  • 成果主義:成果や業績に基づいて評価される。
  • 専門性重視:専門的な知識やスキルが重視されるため、特定の分野での深い知識が求められる。
  • 柔軟な労働形態:フリーランスや契約社員、テレワークなど多様な働き方が一般化。

ジョブ型雇用のメリットは、1つ目に、スキルや知識を持つ専門家を効率的に活用できることです。ジョブ型雇用では、採用時に具体的な職務内容が明示され、その職務に特化したスキルや経験が求められます。これにより、企業は必要なスキルセットを持つ人材を効果的に配置することができ、専門性を活かして業務を遂行することができます。2つ目は、成果に基づく評価が明確で、公平感があることです。ジョブ型雇用では、業績や成果に基づいて評価が行われるため、評価基準が明確で透明性があります。これにより、社員は自分の努力や成果が正当に評価されると感じ、公平感を持つことができます。

一方で、ジョブ型雇用のデメリットは、1つ目に、安定した雇用が保証されにくく、不安定な職場環境になりやすいことです。ジョブ型雇用では、プロジェクトや業務単位での雇用が一般的であり、プロジェクトの終了とともに雇用契約が終了することがあります。これにより、社員は常に次の雇用機会を探す必要があり、職場環境が不安定になりやすい可能性があります。2つ目は、企業文化や価値観の共有が難しいことです。ジョブ型雇用では、専門性を重視するあまり、企業全体の文化や価値観の共有が疎かになることがあります。特に、短期間での雇用が多い場合、社員同士の連携やコミュニケーションが不足し、企業としての一体感を持つことが難しくなります。

なぜ雇用形態は変化したのか

日本の雇用形態がメンバーシップ型からジョブ型へと変化した背景には、複数の要因があります。以下でその主な理由を詳しく説明します。

経済環境の変化

  • グローバル化:経済のグローバル化に伴い、企業は国際競争力を強化する必要が出てきました。グローバル市場で競争するためには、専門的なスキルや知識を持つ人材が求められるようになりました。
  • 経済の変動:経済の変動が激しくなり、企業は迅速に市場の変化に対応する必要がありました。これにより、柔軟で適応力のある雇用形態が求められるようになりました。雇用形態例としては、契約社員や、派遣社員などが挙げられ、より柔軟に働き方を選べるようになりました。

技術の進化

  • デジタル化:デジタル技術や情報技術の進化により、新しいスキルセットが必要とされるようになりました。デジタル分野では、特定の技術や知識を持つ専門家の需要が高まりました。
  • イノベーションのスピード:技術革新のスピードが速くなる中で、企業は最新の技術を迅速に取り入れ、適応する必要が出てきました。これにより、特定の技術に精通した人材の重要性が増しました。

労働力の変化

  • 少子高齢化:日本は少子高齢化が進んでおり、労働力人口が減少しています。これにより、限られた労働力を効率的に活用するために、ジョブ型雇用が求められるようになりました。
  • 多様な働き方のニーズ:働く人々のライフスタイルや価値観が多様化し、柔軟な働き方を求める声が高まりました。これに対応するために、ジョブ型雇用が普及しました。

社会的要因

  • 働き方改革:政府や企業による働き方改革の推進により、柔軟な労働形態が奨励されました。特にテレワークやフレックス制度の導入が加速しました。
  • 男女平等とダイバーシティの推進:女性の社会進出や多様なバックグラウンドを持つ人々の活用が進む中で、個々の能力や状況に応じた柔軟な雇用形態が求められるようになりました。

経営戦略の変化

  • 効率化とコスト削減:企業はコスト削減と効率化を図るために、ジョブ型雇用を導入するようになりました。特定のプロジェクトに対して必要なスキルを持つ人材を一時的に雇用することで、コストを抑えることができます。
  • 成果主義の導入:成果主義が導入され、成果や業績に基づいて評価される仕組みが一般化しました。これにより、特定の職務に対する責任感やモチベーションが高まりました。

上記の要因が組み合わさり、日本の雇用形態はメンバーシップ型からジョブ型を取り入れた雇用形態へと変化してきました。これにより、企業はより柔軟で競争力のある経営を行うことが可能になり、働く人々も多様な働き方を選択できるようになりました。

メンバーシップ型からジョブ型にシフトした企業事例

メンバーシップ型からジョブ型へシフトした企業の例として、以下の企業が挙げられます。

リクルートホールディングス

リクルートホールディングスは、国内外で人材派遣や採用サービスを展開する企業です。同社は、従来のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行を進め、社員の専門性を高めるとともに、成果主義を導入しました。これにより、社員のキャリアアップを支援し、企業全体の競争力を強化しています。

三菱ケミカルホールディングス

三菱ケミカルホールディングスは、化学製品や医薬品などを製造する企業で、ジョブ型雇用へのシフトを進めています。特定のプロジェクトに対して専門知識を持つ社員を配置し、プロジェクトベースでの成果を重視することで、迅速な市場対応と技術革新を実現しています。

パナソニック

パナソニックは、家電製品や電子部品の製造で知られる企業ですが、近年はジョブ型雇用を導入しています。特定の職務に対して明確な責任を持つことで、社員のスキル向上を図りつつ、成果に基づく評価制度を強化しています。これにより、社員のモチベーション向上と企業の成長を目指しています。

ソニー

ソニーはエレクトロニクス、エンターテインメント、金融サービスなど多岐にわたる事業を展開する企業です。ソニーは、グローバルな競争環境に対応するために、ジョブ型雇用を積極的に取り入れています。特に、技術開発やクリエイティブ分野では、専門性を持つ人材を適材適所に配置し、イノベーションを推進しています。

日立製作所

日立製作所は、情報・通信システム、社会・産業システム、電子機器などを手がける総合電機メーカーです。同社は、ジョブ型雇用を取り入れ、グローバル市場での競争力を高めるために、専門性の高い人材を確保し、成果に基づく評価制度を強化しています。これにより、社員のパフォーマンスを最大限に引き出すことを目指しています。

これらの企業は、ジョブ型雇用を導入することで、柔軟な労働環境を提供し、専門性の高い人材を活用しながら、グローバルな競争力を強化しています。

まとめ

【メンバーシップ型雇用の特徴と適合する企業】
メンバーシップ型雇用は、過去から現在にかけて安定性と長期的な忠誠心を重視する雇用形態でした。特に製造業や伝統的な産業、長期的な研究開発が中心の企業に適しています。しかし、急速な技術変化や市場の不確実性が増す現代では、柔軟性や即応性が求められる傾向にあります。

【ジョブ型雇用の特徴と適合する企業】
ジョブ型雇用は、プロジェクトや任務単位での雇用が主流であり、専門性や成果主義を重視する形態です。特にIT業界やクリエイティブ産業、コンサルティング業界で一般的です。近年、私たちは多様な業務形態やフレキシブルな労働条件を求めるようになっています。例えば、リモートワークやフリーランスといった働き方がますます普及しています。特にIT業界では、専門的なスキルを持つ人材がプロジェクトごとに集められ、それぞれの得意分野を発揮することが求められます。クリエイティブ産業でも、フリーランスのデザイナーやライターがプロジェクト単位で雇用され、自由な発想で仕事に取り組むことが多くなっています。また、コンサルティング業界では、クライアントのニーズに応じて専門家がプロジェクトごとに集まり、短期間で最大の成果を出すことが期待されます。このようなジョブ型雇用は、成果が明確に評価されるため、やる気やモチベーションの向上にもつながります。

一方で、私たちがフレキシブルな労働条件を求める背景には、仕事と生活のバランスを取りたいという。リモートワークやフレックスタイム制度を利用することで、自分のペースで働きながら、家族との時間や自己啓発のための時間を大切にすることができます。ジョブ型雇用は、個々の能力や成果を重視し、柔軟な働き方を実現するための重要な手段です。この新しい雇用形態が広がることで、私たちの働き方はさらに多様化し、より充実した生活を送ることができるのではないかと感じます。

そのため、今後メンバーシップ型からジョブ型雇用への移行を検討する場合は以下の点を考える必要があります。

1. 業界と市場の特性の理解
自社が属する業界の特性や市場の動向を分析し、どの雇用形態がより適切かを評価することが必要です。

2. 人材戦略の見直し
企業の成長戦略や人材育成の方針に基づき、どの雇用形態が最も効果的かを検討します。

3. 組織文化の適応
雇用形態の変更が組織文化や社内の価値観にどのように影響するかを考慮し、従業員とのコミュニケーションを重視します。

4. 法的・労働条件の考慮
雇用形態の変更が現地の法的要件や労働条件に適合するかどうかを確認し、リスクを最小限に抑えるための対策を検討します。
これらの方針を踏まえて、企業は将来的な雇用戦略を練り、業界の動向や成長戦略に応じた適切な雇用形態を選択することが求められます。

 

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