パワーハラスメント(Power Harassment)とは通称「パワハラ」と呼ばれ、「職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」と、厚生労働省は定義している。
パワーハラスメントという言葉は、2002年、コンサルティング会社を経営する岡田康子氏によって生み出された和製英語であるが、現在では過労死「karoshi」とともに、日本の労働環境の問題を表現する言葉のとして使用されることもある。なお英語ではBullyingやAbuse of Authorityというのが一般的である。
パワーハラスメントという言葉が生み出された背景としては、日本経済が低迷し始めた1990年代後半以降の企業のリストラ敢行に起因している。企業が社員を解雇するには費用(解雇予告手当て、退職金及び各自治体からの補助金・助成金の停止)が掛かるため、精神的・心理的に追い詰めることにより、自己都合で退社させ費用を抑えようという狙いがあったと考えられる。また、厳しい経営状況が続き、リストラ圧力や厳しい目標達成数値などの心理的プレッシャーによるストレスを部下にぶつける、当たることにより一時的な心の平静を取り戻すといった行動もパワーハラスメントにつながっている。
さらに、パワハラは当時の女性の人権問題として捉えられるようになった背景もある。
「セクシャルハラスメント」が性的嫌がらせであるのにたいし、パワーハラスメントは一般的に正社員が非正社員に対して、あるいは役職が高い者が下の者にたいして行うといった、権利や地位を利用した嫌がらせのことを指す。
パワハラの相談は増加傾向にあり、労働局に寄せられる相談のうちもっとも多いものとなっている。うつ病やPTSDなどの精神疾病を発症したり、最悪の場合、自殺の追い込まれることもある。
しかし会社でのパワーハラスメント対策は、あまり実施されいないのが実情だ。加害者も指導の範疇と考えている場合や被害者も自分がパワーハラスメントの被害者という自覚が薄く、認定が難しいため対策がしづらくなっている。