ゲーミフィケーションとは

人的資本経営における人材育成や従業員エンゲージメントの向上が各企業において重要視される中で、「ゲーミフィケーション」の要素をシステムや研修といった各種コンテンツに取り入れることに注目が集まっています。ゲーミフィケーションとはGamify(ゲーム化する)を名詞化した表現で、ゲームデザインの要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用したものをいいます。ゲームという遊び心を持った仕掛けから生まれる面白さや没頭性が使用者の感情を刺激し、よりモチベーションや積極性の向上、印象に残ることによる記憶の定着化などが期待されています。

ゲーミフィケーションを取り入れる上での課題

一方で、それらのコンテンツにゲーミフィケーションを取り入れることに対する難しさもあります。例えば、本来の目的・ゴールを踏まえた上で設計しないとただ楽しむだけで終わってしまったり、社員全体でそのコンテンツに対しての取り組む意識や結果への感情・行動の変化がなければ関心が薄まり形骸化してしまったりします。せっかく時間とコストを割いて、面白く良いコンテンツを社内で用意したとしても、理想としていた状態の効果に繋がらず形骸化してしまったら、結果として大きな損失になってしまいます。

効果的に導入するための3つのポイント

上記の様な課題も踏まえた上で、ゲーミフィケーションをより効果的にコンテンツへ導入するためには、大きく3つのポイントがあります。

感情変化・行動変容の具体化とストーリー設計

1つ目は、「感情変化・行動変容の具体化とストーリー設計」です。社員がゲームから生まれる面白さからどういった感情変化・行動変容になっていくのか、プレイ後の仕事の様子におけるゴールイメージ像をストーリーとして設計することがポイントになります。
例えば、コンセンサス実習で有名なNASA実習でも、実習の前後で参加した社員がどのような思考や感情(ex. 同じメンバーの価値観・指向性に関する気づき、自ら意見を発信することのワクワク感等)を持つか仮説を立てます。そして実習に取り組んだ後の普段のMTGや議論で、参加した社員たち及びMTGの現場全体がどういった意識や雰囲気で議論を交わし、行動が変わっていくのかをストーリーとして設計していくことが重要になります。

社員の好奇心の追求

2つ目は、「社員の好奇心の追求」です。いくらコンテンツを設計する側が、プレイヤーである社員達の感情変化や行動変容をイメージしてストーリー設計したとしても、社員達の心に響かないケースがあります。その理由は、社員1人1人によって好奇心に繋がる要素が異なるからです。例えばポイント制によるチーム対抗の様なコンテンツを設計した場合に、勝負・競争ごとに対してワクワク感が高まり積極的に取り組む人もいれば、協調性が高く競争ごとに対してそこまで熱量を持てない人もいます。テストプレイなどを重ねながらアンケートやヒアリングを通して、自社の社員達がどういった要素が好奇心・行動のトリガーに繋がるのかを検証し続けることが大切になります。

報酬や称賛への憧れ

3つ目は、「報酬や称賛への憧れ」です。報酬には、評価や特典・称号といった様々な形によるものがあると思いますが、それを受け取る多くの社員達が心理的な喜びや幸福感が生まれるものであることが重要です。ゲーミフィケーションにおけるよくある報酬の称賛の仕方として、ポイント制のランキングやそのランキングの上位者が社内で公表される形式がありますが、それも上位のポイントを獲得したことによって得られる価値や、社内での称賛が対象者にとって魅力的でなければ報酬獲得に向けた意識は薄くなります。一方でMVPの表彰やトロフィー授与などは多くの社員にとっての憧れであり、受け取る側の幸福感も高まるケースが多いでしょう。これは表彰状やトロフィー及びそれに付随する景品の豪華さや、社員全員が心の底から受賞者を祝福する雰囲気が起因になります。多くの社員が魅力・憧れを持ち、私も獲得したいと思うような報酬・結果であるからこそ、初めて本人自らが主体的に熱量高く取り組むようになります。

導入事例

ゲーミフィケーションを実際に現場で導入し効果に繋げている有名な事例としては、世界最大の小売企業でスーパーマーケットのチェーンを展開しているウォルマートの事例が有名です。物流業界の巨人としても知られるウォルマートでは、配送センターにおける安全訓練や日常点検において、安全に関するクイズや実際のシミュレーションをゲーム形式で訓練内に実施したり、管理システム内でのE-learning学習を導入したりしています。ここでもポイントになる要素は、上記でお伝えした“感情変化・行動変容の具体化と設計”です。安全に対する意識・責任は世界最大手の社員として各々が持ちつつも、実際の行動で対応しきれない部分については訓練やE-learning学習を通して、どのような感情変化・行動変容に繋がっていくのか設計がされています。この取り組みの効果として、インシデントおよびヒヤリハットが54%減少するという大きな成果が上がっています。これも訓練データに基づきつつ、効果的な改善策を継続的に実施したことによって、より社員が自ら楽しみつつアウトプットし、現場での実践的な応用に繋がっていることが成果要因として大きな部分になります。

最後に

今回、ゲーミフィケーションをコンテンツの要素として効果的に導入するためのポイントを3つご紹介致しましたが、企業規模・社風によって効果的にコンテンツに当てはめるポイントは変わってきます。まずは今の自社の状況や文化を鑑みた上で、どのポイントを押さえた上でのコンテンツ導入がその企業にとって1番効果的なのか整理しましょう。その上で導入・改善ポイントを意識しながら導入・検証・改善を繰り返すことによって、形骸化から脱却した効果的なコンテンツを構築でき、最終的に「従業員のエンゲージメント向上、楽しく成長し続ける企業の実現」に繋がっていくことが期待できます。 

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