皆さんは暗黙知についてご存知でしょうか?組織を運営していくうえで、個人によって知識の差が生まれます。その知識を共有するために手順書などを作成しますが、ナレッジには暗黙知と形式知という2種類が存在します。今回は暗黙知に焦点を当て、形式知との違い、メリットやデメリット、リスク管理の方法について紹介していきます。

暗黙知って何?形式知との違い

暗黙知と形式知は、ナレッジマネジメントの分野でよく用いられる概念です。ここでは、暗黙知と形式知の定義について説明します。

暗黙知とは

暗黙知は、個人の経験や直感に基づく、言語化や文書化が難しい知識のことを指します。これは、日々の活動や仕事の中で自然に習得し、無意識のうちに使用する知識です。例えば、職人の技術や、特定の作業を効率的に行うためのノウハウ、またはチームワークを円滑にするための感覚や信頼の構築方法などが暗黙知の例です。暗黙知は、直接的な言葉や数値に置き換えることが難しいため、共有や伝達が難しい場合があります。

形式知とは

形式知は、言語化や文書化が可能な知識です。この知識は、マニュアル、文書、データベース、ウェブサイトなどの形で情報を残し、簡単に共有することが可能です。形式知は、理論、データ、手順など、明確な言葉で表現され、誰でもアクセス可能な形で存在します。例えば、企業の運営手順、製品仕様、学術研究の結果などが形式知に該当します。

暗黙知のメリット

イノベーションの宝庫

暗黙知は、従業員が持つ経験や直感に基づくため、新たなアイデアや問題の解決策を生み出す宝庫となり得ます。この知識は、経験から独自に得た情報のため、形式知では考えられない効率的なアプローチをすることが可能です。

会社のコアコンピタンスになる

暗黙知は個人に依存するものであり、他の会社が容易に模倣することができません。これにより、会社は競争相手と差別化を図り、市場で競争優位性を築くことが可能となります。

柔軟性と適応性に繋がる

経験に基づく直感的な判断は、変化する市場情勢や予期せぬトラブルに対して、迅速かつ柔軟に対応することを可能にします。これにより、会社はより効率的な判断を行うことができます。

結束力の強化

暗黙知の共有は、チームメンバー間のコミュニケーションを促進します。共有された経験やスキルは、従業員同士の知識を深め、チームの結束力や技術を強化することが可能です。

暗黙知のデメリット

知識の共有が困難

暗黙知の最大の欠点は、経験則に基づく情報により、共有や伝達が困難であることです。知識が個人に依存しており、会社全体での活用が制限される可能性があります。自分では当たり前に感じていて「共有する必要がない」と感じたとしていても、実は効率化するうえで大切な情報だったりします。

暗黙知が誤解されるリスク

暗黙知は主観的な情報であるため、伝達の過程で誤解が生じやすいです。知識の不完全な共有は、間違った判断や非効率な作業プロセスを引き起こす原因となり得ます。例えば、あるチームメンバーが長年の経験から習得した特定の作業手順を他のメンバーに口頭で伝える際、その手順の理由が十分に説明されない場合があります。このような状況では、情報の受け手がその手順を正確に理解しないまま仕事で使用し、結果的に作業の質が低下するか、最悪の場合、作業自体が失敗に終わる可能性があります。

暗黙知が失われるリスク

従業員の退職や異動により、その人が持つ暗黙知が失われるリスクがあります。暗黙知の引継ぎは、文書化が難しいため、会社にとって大きな課題となる場合が多いです。

過度な依存によるリスク

暗黙知は過度に依存すると、データに基づく判断がおろそかになる可能性があります。例えば、市場では常に新しいトレンドが流行します。過去の経験や直感のみに依存することは、プロジェクトの失敗に繋がる可能性があります。

組織内格差の拡大

暗黙知が特定の個人やグループに集中している場合、知識の共有が不十分であると組織内での情報格差が生じる可能性があります。この情報格差は、チームの連携に悪影響を与える可能性があります。特に、新入社員や他部門から移動してきた従業員が、既存のチームメンバーと同じレベルの知識や情報についていけない場合、チームの足を引っ張ることがあります。

情報の更新が難しい

暗黙知は、情報の更新や改善が困難であるという特徴があります。個人が無意識のうちに使用している知識や技術は、古くなる場合がありますが、情報を資料として残していないため、古い情報を識別して新しい情報に更新することは、難しいです。組織が既存の暗黙知に頼りすぎると、新しいやり方や技術の導入が遅れ、結果として業務の効率性や競争力の低下につながる可能性があります。

暗黙知を共有する方法

効果的な方法を用いれば、暗黙知の共有を促進することが可能です。ここでは、暗黙知を共有するための効果的なアプローチを紹介します。

メンタリングとコーチング

メンタリングやコーチングは、経験豊富な従業員が、知識やスキルを直接後輩や同僚に伝達する効果的な手段です。課題に対して、一対一の形式で、何度も話し合うことによって、自身の経験に基づくアドバイスを提供します。これにより、暗黙知が言語化され、共有される機会が生まれます。

コミュニティ・オブ・プラクティス

コミュニティ・オブ・プラクティスは、共通の関心事や課題に取り組むグループを指します。定期的なミーティングを行い、メンバーは経験や知識を共有し、お互いから学び合います。このような交流は、暗黙知の共有を促進する効果的な手段となります。

ジョブローテーション

ジョブローテーションは、従業員が異なる部門やプロジェクトチームで一定期間働くことにより、新たなスキルや知識を学ぶ方法です。この方法を実施することで、従業員は多様な環境や課題に直面し、新しい暗黙知を吸収するとともに、既に持っている暗黙知を他のメンバーと共有する機会を得ます。

コラボレーションツールの活用

コラボレーションツールはプロジェクトを円滑に進めるためのシステムの総称です。従業員がリアルタイムで情報を共有し、コミュニケーションを取るのに役立ちます。このツールを通じて、知識や経験が共有され、暗黙知の伝達が促進されます。

暗黙知のリスク管理

暗黙知は貴重な資産になりますが、特性上、様々なリスクも伴います。ここでは、暗黙知のリスク管理における手法を解説します。

暗黙知を識別する

リスク管理の第一歩は、どの従業員が重要な知識を持っているのか、その知識が業務プロセスのどの部分に貢献しているのかを明らかにすることが大切です。暗黙知を識別することで、プロジェクトで効率的に使用することができます。

暗黙知の文書化

識別した暗黙知を形式知に変換し、可能な限り文書化します。手順、ガイドライン、箇条書きなどの形で記録し、これを会社内の管理システムに保存します。文書化された知識は、会社全体で共有され、簡単にアクセスすることが可能となります。

リスクアセスメントを実施する

定期的なリスクアセスメントを実施し、暗黙知関連のリスクが組織に与える影響を評価します。もし、悪影響を与える場合、リスクに優先度をつけて改善していく必要があります。

暗黙知をうまく活用してナレッジマネジメントを成功させよう

暗黙知はメリットやデメリットがあり、一長一短ですが、リスク管理を適切に行うことで利益を発生させることができます。暗黙知を活用するうえで一番大切なのは、暗黙知の内容を常に更新して、周知させることです。そのためには、リーダーを決めて会社として推進していくようにしてください。今回紹介した内容を参考にして、ナレッジマネジメントを成功させましょう。

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