日本の奨学金制度は、多くの学生が高等教育を受けるための重要な手段となっています。しかし、貸与型奨学金の返済は社会人になってからの大きな負担となることが多く、十分な認識がないまま利用するケースも少なくありません。本記事では、奨学金の基本的な仕組み、返済計画の重要性、そして返済リスクとキャリアプラン・ライフプランとの関係について解説します。

奨学金制度の概要
奨学金は、経済的な理由で高等教育の継続が困難な学生を支援するための制度です。日本では、日本学生支援機構(JASSO)が提供する奨学金が代表的ですが、地方自治体や民間団体、大学独自の奨学金制度も存在します。奨学金には大きく分けて二つの種類があります。まず一つ目は給付型奨学金です。これは返済不要で、主に学業成績が優秀な学生や経済的に困難な状況にある学生に対して支給されます。もう一つは貸与型奨学金で、卒業後に返済が必要なものです。貸与型奨学金はさらに、利子の有無によって分類されます。
日本学生支援機構(JASSO)のデータによると 、日本の大学生の3人に1人が奨学金を利用しており、令和5年度の給付型奨学金を利用した人数が34万人であるのに対し、貸与型奨学金を利用した人数は96万人と、返済が必要な奨学金を利用する学生が多い状況です。その結果、卒業時には平均313万円の返還義務を負うこととなり、社会人になってからの生活設計に大きな影響を及ぼすこともあります。
奨学金の返済負担は、特に社会人になったばかりの若者にとって大きなものとなります。給与のうち一定割合を毎月返済に充てなければならないため、生活費や貯蓄の余裕がなくなり、将来的なライフプランの選択肢が狭まる可能性があります。特に低所得者層では、返済が厳しくなり、転職やキャリアアップの機会を逃すこともあります。また、結婚や住宅購入といったライフイベントにも影響を及ぼし、経済的に不安定になることが懸念されます。
奨学金の返済計画の重要性
奨学金を適切に利用し、キャリアアップやライフイベントへの影響を最小限にするためには、返済計画を立てることが不可欠です。将来的な収入と支出のバランスを考えた計画が求められます。JASSOの貸与型奨学金には、主に二つの返済方法があります。一つは定額返還方式で、毎月一定額を返済する最も一般的な方法です。もう一つは所得連動返還方式で、収入に応じて返済額が変動する仕組みになっています。この方式は、収入が少ない時期には負担が軽減されるため、特に収入の変動が大きい職種に就く場合には適していると言えるでしょう。返済計画を立てる際には、キャリアプランやライフプラン、マネープランとあわせて検討することが必要です。
- 収入と支出のバランスを把握する
毎月の収入と支出を明確にし、奨学金返済をどの程度組み込めるのかを計算します。特に、生活費や貯蓄とのバランスを考慮し、無理のない計画を立てましょう
- 返済方法の選択
定額返還方式か所得連動返還方式のどちらを選ぶべきかを検討します。将来的な収入の見通しが不透明な場合は、所得連動返還方式を選択すると負担を軽減できる可能性があります
- 繰り上げ返済の活用
収入に余裕があるときに繰り上げ返済を行うことで、早期の完済を目指すことができます
- ライフイベントを考慮する
結婚、出産、住宅購入など、将来的なライフイベントを考慮し、奨学金の返済が家計にどの程度の影響を与えるかを見極め、長期的なシミュレーションを行いましょう
- キャリアプランとの整合性
転職や独立を考える際には、収入の変化や想定される支出を計算し、慎重に判断しましょう
奨学金返済のリスクとキャリアプラン
奨学金を借りることにはリスクも伴います。社会人になってからの返済負担は、キャリアの選択やライフプランに影響を与える可能性があります。たとえば、奨学金の返済が必要な場合、転職の自由度が低下することがあります。収入が安定しない職種や起業を目指す場合、奨学金の返済が大きな障害となることが考えられます。また、奨学金の返済があると、住宅ローンや投資といった資産形成が難しくなる可能性もあります。
さらに、結婚や出産を考える際にも家計負担の一因となり、長期的な生活設計に影響を及ぼすことがあります。こうしたリスクを軽減するために、JASSOの企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度が注目されています。この制度では、企業が従業員の奨学金返済を代わりに行うことで、採用力の強化につながり、優秀な人材を確保しやすくなるというメリットがあります。結果として、従業員の定着率が向上し、企業の生産性や評価も高まることが期待できます。
まとめ
奨学金は、多くの学生にとって高等教育を受けるための重要な支援制度ですが、卒業後の返済負担が大きな課題となっています。適切な返済計画を立てることが求められる一方で、企業が支援することで、従業員の負担を軽減し、優秀な人材の確保につなげることが可能です。奨学金返済問題を社会全体で解決するためにも、企業はどのような支援ができるかを考えていくことが重要ではないでしょうか。
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