皆さんの会社では、年度初めや期初の段階で「目標設定」を行っているでしょうか?弊社でも、上半期と下半期のそれぞれの期初に1回ずつ、年2回の目標設定を行っています。この目標設定ですが、「何となく重要な取り組みではあることは理解しているけど、結局どうして目標設定するのだろう…?」と疑問に感じたことはないでしょうか?上司に言われるがまま目標設定していたり、何となくの感覚で目標を考えたりしていないでしょうか。
また、目標設定の意味を理解していたとしても、結局どのように目標考えていけばよいのかや、考えた目標をどのように行動に落とし込んでいけばよいのか…など、目標設定1つを取ってみても結構時間がかかるし、通常業務の傍ら目標設定を考えるのはハードだし、乗り越える必要がある課題がたくさんある…と感じたことはないでしょうか?
今回のコラムではこの目標設定について、そもそもなぜ目標設定をする必要があるのかという問いから考えていきたいと思います。また、立てた目標をどのように日々の行動に落とし込んでいくべきかなど、目標設定にかかる様々なモヤモヤを整理していきたいと思います。

なぜ目標設定を行うのか?
年度初めや期初に行う目標設定。その意味は何でしょうか?
ここには様々な捉え方や考え方があるかと思いますが、私は目標設定の最大の目的は「自分の行動を方向付ける羅針盤」としての機能だと考えています。自分自身が一定期間でどのような姿や状態になっているかという理想像を明確にイメージすることで、その理想像と現状とのギャップを認識し、理想像に近づくためのステップを構築できると考えます。その理想像と現状とのギャップを目標設定という方法論を通じて可視化することが、羅針盤としての機能につながると考えます。
この考えに基づくと、なぜ目標設定が年度初めや期初に行うのかの意味も明確になるのではないでしょうか。期の途中で目標設定するのではなく、しっかりと期初の段階で自分の理想像を描くことで、今期自分がやるべき事が初めて明確になってきます。もちろん期の途中で自分の理想像が変わることはあると思います。それ自体は全く問題なく、都度自分の羅針盤をアップデートして修正していく事はむしろ良いことです。大切なのは、常に自分の方向性を持ち続け、目標設定を拠り所として理想像に近づいていくという考え方を持つことだと思います。
自分の理想像を明確に持てている人は、“そのために何を行うべきか”という次のステップを考えられる状態になります。この状態では、自分の現在地と理想像とのギャップをどのように埋めることができるのか、そのために取るべき行動は何かがおのずと浮かび上がってくるようになります。だからこそ、より期初の段階で自分の理想像を明確にしておく必要があります。
自分の理想像を明確にする方法とは?
「そうは言っても、自分の理想像ってどうやって明確にするの?」という疑問が浮かんでくる方も多いかもしれません。正直、テクニカルな話はたくさんあります。(目標設定のフレームワークを使いましょう、例えばSMARTモデル、GROWモデルなど…というお話。調べればいくらでも出てきます。)ただ、理想像を描く際はテクニカルな話を用いて自分の理想像を描くのではなく、本当に自分がやりたい事やありたい姿が何なのかを一度発散させることが必要だと思います。確かにテクニカルなモデル論を使って理想像を描く=目標設定を考えることは効率的かもしれません。しかし、先ほどからの繰り返しになりますが、目標設定の最大の目的は自分の羅針盤とすることにあります。そうであるならば、効率を一旦無視して、本当に自分がやりたいこと、ありたい姿は何なのかを自分と向き合ってじっくり考える時間が必要だと思います。きれいでなくても整ってなくても結構ですので、自分のやりたいこと、ありたい姿が何なのかを発散させて考えてみましょう。ここで、理想像を描く発散のやり方をご紹介します。
紙とペンを用意し、思いつく限り自分のやりたいこと、ありたい姿、理想像をたくさん描きましょう。なんでも結構です。お金持ちになりたい、昇格したい、仕事で○○ができるようになりたい、上司に認められたい…などなど。
たくさん出てきた自分の理想像の中から、①すぐに実現できそうなこと、②時間はかかるが実現できそうなこと、③今は実現できなそうなこと、の3つに分類してみましょう。①に分類したものは明日からでもすぐに実行してみましょう。③に分類したものは自分の中長期視点での目標になりえます。ぜひ大切に持ち続けてほしい理想像になるので忘れないようにしましょう。
ポイントは②に分類されたものです。②は今の自分から少し時間が経過したときに実現ができそうな理想像がたくさん含まれていると思います。これはまさに、期初の時点で理想像を描くときにとても大切になる材料です。今はその姿に達していないけれど、努力すればその姿に近づくことができるというのは、まさに目標設定時に理想像を描くことにとても有効な材料となりえます。このように、自分のありたい姿や理想像を描くときには、自分自身で一度たくさん発散をさせてから考えると、本当に自分がやりたいことやありたい姿を自分自身で納得した形で描くことができると思います。
具体的な行動への落とし方
この発散の方法は、具体的な行動への落とし方にも活用できます。自分の理想像が明確になったら、今度はそれを実現するための手立てを同じように発散させてたくさん考えてみましょう。この時に、自分一人で行ってもよいのですが、ぜひ同僚や上司を活用して別の視点も取り入れてみましょう。理想像に達するための方法、行動は無数にあると思います。自分で思いつくものだけではなく、他者の視点をたくさん取り入れることで、実現のためのステップを網羅的に検討することができます。
この時に大切なのは、「これは関係ない」とか「これは無理じゃないか」という視点を排除することです。重要なのはとにかく発散させることですので、関係ないとか無理とかは後で判断すればよいのです。とにかくたくさんの方法や行動を他者も交えたブレインストーミングで出し尽くしましょう。
たくさん出し尽くせたら、先ほどと同じように実現可能性に基づいて3つに分類してみましょう。今回は達成のための行動ですので、①に分類したものは今から実行するようにし、②に分類したものが理想像に近づくために必要な手立てがたくさん含まれている可能性が高いです。③に分類したものは、今すぐ実行はできないかもしれませんが、これは将来的にイノベーションを起こすことができるかもしれない重要な手立てかもしれません。これもぜひ大切に保管しましょう。
目標設定は自分の成長に繋げるためのツール
今回のコラムでは、目標設定にフォーカスを当ててその意味や考え方を整理しました。特に、「目標設定は自分の羅針盤となる」という話を繰り返ししてきました。この羅針盤を持つことの意味として、自分の理想像に近づくため、すなわち自分で自分を引き上げていく自己成長を実現するためにあると思います。よく外発的動機付けと内発的動機付けという話をよく耳にすると思いますが、自分自身で理想像を描き、自分自身で理想像に近づくための行動を起こすことができるような目標設定ができることは、内発的動機付けの中でも最も効果の高い動機付けができると考えます。この状態になれば、自分自身で成長を実現できるような状態を作ることができるのではないでしょうか。今回のコラムを通して、目標設定に対して皆さんの中で納得する意味付けができる一助となれば幸いです。
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