みなし労働時間制とは?
みなし労働時間制 は、実際に働いた時間とは関係なく、事前に定められた労働時間を働いたと見なす制度です。
この制度は、事業場外での業務を行う職種(営業職など、外出が多く、労働時間の正確な算出が難しい場合)。
専門性が高い仕事(労働者に時間管理を任せることで、より高いパフォーマンスが期待される職種)のような特定の職種や状況で適用されることが一般的です。
また、みなし労働時間であっても、1日8時間、1週40時間を超える場合は「36協定」の締結が必要となり、使用者は割増賃金を支払わなければなりません。みなし労働時間を適用している場合においても、法定休日労働、深夜労働、休憩などに関する労働基準法上の規定の適用は守る必要があります。
みなし労働時間制の種類
みなし労働時間制 には、労働時間の管理方法に応じて3つの異なる種類が存在します。これらはそれぞれ特定の職種や業務状況に応じて適用されます。
事業場外みなし労働時間制
事業場外みなし労働時間制 は、営業職など事業場外での業務が多く、使用者の指揮監督が及ばないために労働時間の正確な算出が難しい場合に適用される制度です。この制度は、以下のような特定の条件下でのみ適用されます。
適用条件
・労働時間の客観的な把握が困難な場合
事業場外での作業が主であり、使用者による直接の監督がほとんどない場合。
適用できないケース
・グループでの作業
グループ内に労働時間の管理ができる人がいる場合。
・指示や監督の下での作業
電話やメールなどで常時管理職の指示を受けながら働いている場合。
・具体的指示に基づく業務
業務の具体的な指示に従っており、定期的に帰社する場合。
事業場外での勤務という事実だけでは、自動的に事業場外みなし労働時間制の適用が認められるわけではありません。労働時間の把握が客観的に困難であることが必要です。
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制 は、特定の高度な専門性を要する業務に適用される制度です。この制度の特徴は、業務の遂行方法や時間配分を大きく労働者に委ねることにあります。労働者の自主性と専門性を活かし、より良い成果を出すことが目的です。
専門業務型裁量労働制が適用される業務は、以下のような特定の分野に限られています。
研究職
新しい知識や技術の開発、研究など。
情報処理システムの業務
ソフトウェア開発、システム設計など。
デザインの考案業務
グラフィックデザイン、産業デザインなど。
放送番組等のプロデューサー業務
番組制作、企画、管理など。
記者・編集者の業務
ニュースや出版物の取材、編集など。
弁護士の業務
法律相談、訴訟代理など。
これらは厚生労働省令及び大臣告示により規定された19種類の業務に含まれます。
専門業務型裁量労働制の目的は、労働者の専門性と自律性を最大限に活かし、労働時間に縛られずに高い成果を出すことにあります。この制度は、労働時間の管理よりも成果の質と効率性を重視する業務に適しています。
労働者が自身の裁量で作業を進めるため、労働者の専門知識、判断力、自律性が特に重要になります。また、適切な労働環境の提供と労働者の健康管理も、この制度の成功には不可欠です。
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制 は、企業の事業運営に関連する企画、立案、調査、分析などの業務を行う労働者に適用される制度です。この制度では、労働者が自らの知識、技術、創造性を活かし、仕事の進め方や時間配分を自主的に決定します。
企画業務型裁量労働制の適用は以下の条件を満たす事業場に限られます。
本社・本店である事業場
企業の主要な意思決定が行われる場所。
その他の事業場
当該事業場の属する企業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる場所。
本社・本店からの具体的な指示を受けず、独自に事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等。
適用外の事業場
・製造のみを行う事業場
製造業務に特化している場合は適用外です。
・本社の指示を受けて営業活動を行う事業場
直接的な指示に基づいて業務を遂行する場合は適用外です。
対象業務と労働者
・対象業務
事業運営に関しての企画、立案、調査、分析など。
・対象労働者
これらの業務に常態として従事し、適切に業務を遂行するための知識や経験を有する労働者に限定されます。
企画業務型裁量労働制は、創造性や自主性が求められる業務において、労働者が自身の裁量で業務を進めることを可能にします。この制度は、労働時間の管理よりも業務の成果や品質に重点を置いています。労働者の自律性と専門性を尊重し、効率的かつ柔軟な働き方を促進することを目的としています。