この記事はシリーズです。前回分は以下リンクから確認できます。
第1回では、次世代リーダーに必要な素養についてご案内しました。第2回では、次世代リーダーを見極める具体的な手法についてご紹介します。
なぜ「選抜」が難しいのか―見極めの壁
次世代リーダーの選抜は、企業の成長と持続可能性を支える鍵となります。一方で、「経営者候補をどのように選抜したらよいのか」「求める人材像はあるものの、実際に誰がその素養を持っているのか把握しきれない」など、リーダーとして見極めるところで課題を感じていらっしゃる声をお聞きします。
不確実で、複雑で、不連続な変化を続ける外部環境は、その変化のスピードは年々早まり続けているように見えます。変化の早い外部環境に適応する組織の在り方や、成長戦略を描くことが難しくなり、企業の成長を中長期的に支える人材に必要な素養を見極めることも難しくなっていることが背景にあると考えられます。また、これまでは「感覚」や「経験則」で選抜してきた組織でも、人材の多様化や組織の成長に伴う人員の増加などにより、優秀な人材を選抜段階で見落とすリスクを懸念される声もお聞きします。リーダー人材を適正に選抜する、具体的な手法について考えます。
次世代リーダーを見極めるための選抜方法
次世代リーダーを見極めるための前提として、組織として求めるリーダー像の明確化、具体的な行動例が経営陣や選抜メンバーの中で共通の認識となっていることが挙げられます。その上で、以下のような選抜方法が有効であると考えられます。
アセスメントツールの活用
適切なアセスメントツールを整備し、次世代リーダーの素養を測定することが求められますが、ここで重要なことは、アセスメントと人事評価の違いです。日常の成果や行動を評価する人事評価は、「過去」を評価しますが、アセスメントは「未来」を評価する点が大きく異なります。アセスメントは、以下のような測定方法があります。
ヒアリング
どのような素養を持っているのか、コンピテンシー(行動特性)の特徴をヒアリングする場合に用いられます。これまでに起きた特に印象的な出来事を深く聞き出し、どのような課題に向かって、どのような状況の中、どのように考え、どのように行動し、その結果どうなったのかを聞き出します。課題、状況の中での思考、行動、その結果から、その人の持っている行動特性を引き出します。
インバスケット実習
時間的制約の中で、数多くある未処理の課題の中から、解決する優先順位付けとその理由を引き出します。的確かつ迅速に優先順位を付けた上で未解決の案件を処理する力を測定します。実習形式で行う場合、解決力を向上するトレーニングにつなげることも合わせて狙います。
多面評価
本人、上司、同僚、部下から、どのようにみられているのかを評価し、フィードバックします。多面評価を管理職選抜の際に活用する場合、多くは管理職になるにあたって気づきと振り返りのツールとして、育成目的で活用されることが多くあります。
選抜と育成を合わせた仕組みを再構築する
選抜を成功させることは、育成を加速させることにもつながります。つまり選抜と育成を相互に作用させながら行うことで、相乗効果を図ることも期待されます。
例えば、社内公募制や部門横断プロジェクトのアサインなどの仕組みを再構築することで、選抜前に次期リーダーとして活躍する場を提供します。そこでの学びや経験、失敗も含めて成長(育成)の機会を提供することで、選抜と育成を同時に狙います。実際の選抜前に部門横断的なプロジェクトに参画できれば、直属上司だけではない関係者が増え、人材を評価する多角的な視点を取り入れることにもつながります。
以上のように、アセスメントツールを活用することや、選抜と育成を合わせた仕組みを再構築することは、選抜の成功と育成の質を高めるものだと考えられます。選抜段階での投資は、育成の質を高めることにもつながります。見極めの精度を上げる取り組みそのものが、企業の競争力に直結するともいえます。今後の選抜手法を見直すことで、企業の持続的な成長を支える次世代リーダーの輩出が期待されます。
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